〜3日目〜         









最終日は今回の旅の目的の一つである、札沼線に乗車します。このために函館から北上してきたようなもの。去年北斗星の旅の時に乗りそびれて しまったので、今回は何としても乗っておきたいところ。


札幌の最近の話題(鉄的な)といえば市電のループ化!昨年12月に西4丁目〜すすきの間が新設され、それまでU字だった札幌市電が一本に繋がり環状運転されるように なりました。実は乗車は昨日のうちに済ませたので、今朝は沿道から新設区間の様子を見てみることにします。
交通量の多い繁華街に新たに敷設するのは大変

歩道側に軌道を敷くサイドリザベーション方式を採用

新設の狸小路電停

大通から徒歩で札幌駅へ



ループ化により市電の利用者数は想定以上に伸びているそうです。実は延伸区間はかつて地下鉄開業と引き換えに廃止になった区間。低床車両の導入などで地下鉄よりも バリアフリーで市街地の活性化に繋がる路面電車やLRTが近年見直されてきています。


いよいよ2年越しとなる、札沼線に乗車。ローカル線の一つがわざわざ北海道へ来る目的?そうです、それだけの価値が札沼線にはあります。しかしそれは景色が良いとか 群を抜いて長閑だとかではなく・・・その末期的な本数の少なさ!なんと末端部分の浦臼〜新十津川間は1往復/日しかないのです。どういうことか確かめたくなりませんか?札沼線にはここにしかないローカルっぷりがあるのです。


まずは6:58発の札沼線ならぬ学園都市線石狩月形行に乗車。札沼線でも札幌近郊区間内は新駅設置や沿線開発などで通勤通学路線として需要も多く、2012年に電化開業も果たしています。 この時間の下りなので札幌発車時点では乗客もそこそこでしたが、徐々に学生で混雑するように。まさに郊外電車の様相です。


終点の石狩当別で様子は一変。乗客は大量下車し、列車は6両の電車から1両の気動車へ。次の北海道医療大学まで学生利用があると思っていましたが、意外と皆さんここで下車 するようです。そしてここから乗車するのが1往復/日のみの新十津川行。それはつまり、新十津川へ行く始発であり、終電でもあるのです。


石狩月形で十数人の高校生が下車し、乗客は10人くらいに。交換待ちで20分停車。
マニアはこぞって撮影タイム

石狩月形までは7.5往復、浦臼までは6往復あります

⇔はホントに行って帰っておしまい

乗るぶんには空いている方が良いですが・・

上り列車が到着

8:40出発〜

石狩月形を出発すると列車は森の中へ

おお、ここが有名な豊ヶ岡!

位置的には美唄の辺り、国道も近いのにこの秘境駅感

札比内の辺りから開けてきました

8:57晩生内 駅舎の雰囲気はいいですね

国道275号と並走

後面展望

札的〜 駅周辺のひと気はあるんですけどね・・



浦臼の写真を撮り損ねましたが、ついに1往復/日区間に入りました。去年乗り損ねた時は3往復/日あったんですが、3月のダイヤ改正で削減されてしまいました。 地図で見ても市街地や国道とはそれほど離れていないはずですが、この先そんなに未開の地を行くのでしょうか?
景色は意外と良いかも?

おさつない・・あんまり良い響きじゃないですね

非冷房なのでみんな窓開けてます

札幌近郊だけでなく末端も学園都市線っていうのね

乗降なし

なんとなく趣のある駅

風が気持ちいい〜

この踏切が閉まるのも一日に2回だけ



9:28、定刻通り終点新十津川に到着!無事に札沼線の完乗を果たしました。やはりここまで乗車してきた人々は乗り鉄や物見雄山な人ばかりです。というか 浦臼以降一切乗降はありませんでした・・。


駅では今や名物?となった保育園児のお出迎えがあります。列車の時刻に合わせて散歩に来ているらしいです。


終端方は留置できそうな程度に伸びた後、車止めの先にアパートが立ちはだかっています。かつては留萌本線の石狩沼田まで線路は伸びており、それ故「札沼線」と名がついたわけですが、国鉄時代に 大赤字区間として部分廃止になっています。路線図で見ると盲腸線となってしまってもったいない気もしますが、今や留萌本線のほうもかなり危うい状況(留萌〜増毛は12月の廃止が決定)で、縮小均衡へ歯止めがかからない状況です。
※マウスオンで写真が変わります


個人的には、路線整理がむしろ遅すぎたのではないかとも思います。札沼線の沿線は見ていた限り人跡未踏の地ではなく、まばらながら民家もあり 生活が営まれています。確かに沿線人口は少ないですが、それ以上にやはり地元の人が鉄道を利用しないからこそ、一日1往復などという極端な飼い殺しもいいところの状況を生み、そしてその状況を受け入れてしまっているのです。


結局は卵が先かニワトリが先かの議論になりますが、住民が不便な鉄道を見放しマイカーやバスを選択したのならその鉄道の存在意義は失われているのです。 もはや1往復、しかも先に「下り」で折り返し「上り」の輸送機関を誰が必要としているのでしょうか。不祥事が続いたからか弱腰姿勢のJRも交通機関を担う事業者として情けないですし、それ以上にここまできても廃止を容認しない沿線自治体は 理解に苦しみますし、その態度にはゴネ得狙いとしか映りようがありません。


ものの12分で折返し「始発」で「最終」の石狩当別行が発車します。完全に日常利用の交通機関としては破綻しています。誰かならこう言うでしょう、 「お前はすでに死んでいる」と。


こうして1往復/日というインパクトが全国的な話題を呼び、遠方から乗りに来る人がいるという意味では観光振興になっているのかもしれませんが、今のJR北海道に そんな慈善事業どころかおふざけのようなことをやっている余裕はあるのでしょうか。それ以上にこの全国から人が来るチャンスを何もせずほったらかしている沿線自治体にこそ、鉄道存続の願いなど口だけなのが窺い知れるというものです。
岩泉線もビックリの時刻表

長閑な終着駅

7割くらいの人が折り返していきました

町役場から滝川行のバスが出ています



さて私は折返し列車には乗らず、少し街を散策。駅前にはいつからあるのか不詳なプレハブ小屋が。


中では鉄道グッズの販売のほか、軽い食事もできるようです。せっかくなので新十津川駅の駅名キ−ホルダーと増毛駅のクリアファイルを購入。こうやってもっとせっかく来た観光客に 消費させないと。思えば以前江差線の廃止前に乗車した時は江差駅前には何もなく、もったいないな〜と思ったものです。ちなみに留萌線はすでに廃止発表され連日お名残り乗車で混雑しているという情報なので乗車は諦めます。


駅から徒歩5分で新十津川町役場に到着。役場前から1時間に一本滝川行のバスが出ているので、先ほどの札沼線の終電を逃しても大丈夫。


役場で「終着駅到達証明書」を発行しているというので行ってみたら、観光案内の地図ももらったので物産館に行ってみることに。一応自治体も何もせずにいるわけではないようです。 できればもっと事前の周知というかPRをそれこそJRなどと組んでやったほうがいいんじゃないですかね。


少し早いですが食事処で昼食。金滴酒粕ラーメンは酒粕入りで非常に温まりました。


駆け足で役場に戻り、10:50発のバスに乗車します。役場から乗車したのは2人だけでした。


15分で滝川駅前に到着。札沼線沿線の人は鉄道を利用するにしても、1往復だか3往復だかの札沼線を使うより函館本線の駅に出たほうがよっぽど便利だというのが実際のようです。 その意味では特に末端区間においては函館本線という代替可能な路線が比較的近くにあることが、札沼線の存在価値を薄めてしまったのかもしれません。
11:38発岩見沢行に乗車

空知川を渡る

豊沼〜 北海道によくある駅舎タイプ

光珠内〜 長閑な駅前

12:17 終点岩見沢到着

広い構内は操車場や機関区があった名残り

脱線転てつ器がある!

レンガとガラスを多用したオサレな駅舎

旧駅舎焼失によるリノベーションだとか

レールセンターがあるため廃レールを活用



岩見沢からは未乗路線の乗りつぶしということで室蘭本線経由で夕張へ向かいます。ここから長万部まで伸びる室蘭本線は沼ノ端を境に大きく性格が変わります。長万部方は函館方面の特急が往来する主要幹線ですが、 岩見沢方は普通列車が一日におよそ8往復するのみの超ローカル線。そもそも空知地方の石炭を港まで輸送するために建設された路線であり、旅客需要は札幌方面を向いていない時点でハナから見込むべくもありません。現在は道北・道東対本州方面など 札幌圏を経由しない貨物列車の短絡線としての役割がメインとなっており、路線廃止という話にはなっていませんが、場合によっては旅客営業のみ終了し貨物線化という可能性もこの先有り得なくはないです。


存廃議論においても利便性だとかJRの自助努力だとかいう前に、このような最初から旅客輸送などオマケのようにやっていた路線の存続など無理な話なんです。石炭輸送という 屋台骨を失い大量高速輸送機関としての存在意義が消滅し、輸送ニーズにも合致していない、並行道路も存在しバスへの代替が可能であるのにどうして鉄道輸送を維持しなければならない理由があるのでしょうか。札沼線もそうですが、JRはもっと路線整理に 早くから向き合うべきでした。そのツケが安全投資を先送りにさせ、近年の問題噴出や経営難を招き、突然の存続問題発生という批判や不信感に繋がっているのだと思います。


さて函館本線と別れ、初乗車となる室蘭本線のローカル区間。当然車内はガラガラです。地図で見ると線路は直線的で平坦と線形は良い様子。重量貨物列車の通過には好都合。
かわいらしい駅舎

立派な駅舎の栗山駅 乗降あり

JR貨物のコンテナが見えます

道路ならここから夕張へ抜けられます

何の畑だろう?

古山〜



岩見沢から45分で追分に到着。石勝線に乗り換えます。追分といえばかつては機関区があり、蒸気機関車の時代さらには石炭輸送が盛んだった時代には鉄道の町として栄えました。
検査上がりなのか綺麗なキハ40

今となっては寂しさ漂う広い構内



乗り換えまで1時間半ほど時間があるので街へ繰り出します。以前は効率的な乗りつぶしのため乗り換え時間は短いほどいいと思っていましたが、知らない街を歩いたりするのも悪くないと 思うようになってきました。あと年取ってくると乗りっぱなしってのもキツイw
駅前に動輪のモニュメント

橋にもSLの車輪が埋め込まれています



駅のすぐ北側にある安平町ぬくもりセンターへ。温泉施設が併設されているのでまだ旅の途中ですがひと汗流していきます。地域の活性化なんて言ったら大袈裟過ぎますが、 せっかく来たのですから少しくらいお金を落としていきましょう。
こういうラーメンもたまに無性に食べたくなる

甲子園の地区予選〜 みんな観戦してました



良い感じに時間を潰したところで、15:18発石勝線夕張行に乗車します。単線特急街道の石勝線において普通列車の存在感は薄く、一本前は11:17発、一本後は18:15発の最終となります。


全線単線の石勝線では各駅に待避線が設けられており、分岐器部分は雪害防止のシェルターに覆われています。


こうして到着したのは東追分信号場。・・実はここ、3月ダイヤ改正で廃止になったばかりの東追分駅。特急退避のため運転停車するそうで、どうせ止まるなら駅のままでいいんじゃ? と思いがちですが、やはり施設の維持管理や冬季の除雪にお金がかかるようで、ここ数年北海道では毎年のように小駅の廃止が続いています。


特に冬季における安全安定輸送の維持には想像を絶する苦労があるものと思われます。なおJR発表によると廃止前の東追分駅の利用者数は「1日平均1人以下」。いや、何でもっと早く 廃止しなかったし・・。
スーパーとかちと交換

川端〜 こちらは営業中

夕張川を渡ります

滝ノ下信号場 信号場にも看板があるのが面白い

こちらも営業中の滝ノ上駅 ちょっと降りてみたい

東追分とともに廃止になった十三里 ホームは撤去済?



15:55新夕張に到着。石勝線の運転上の要となる駅で、ここから特急列車はすべて占冠・帯広方面へ、普通列車はすべて夕張方面へと特急と普通で運転系統が全く分かれる珍しい駅でもあります。 特に新夕張〜新得は開業当初から普通列車が運転されておらず、この区間に限り18きっぷを含め普通乗車券のみで特急列車に乗車可能という特例が設けられています。在来線で特急列車しか走らない線区は、津軽海峡線が新幹線となった今では全国でここだけです。


そんな特急街道ならぬ特急専用線と別れ、こちらは夕張支線と呼ばれる夕張方面へ。この先は1日5往復の普通列車が走るだけ。乗客は10人くらい。


妙にホームから駅舎までが離れています。清水沢からはかつて三菱大夕張鉄道が伸びていたので、その跡地でしょうか。三菱大夕張鉄道の南大夕張駅跡には2012年にレンタカーで訪れたことがあります。


16:23終点夕張駅に到着。夕張で下車したのは6人位で、地元高校生の乗車もありました。マニアは2〜3人位でしょうか。


夕張には大学時代に自転車部の夏合宿で来たことがあります。当時は夕張市が財政破綻で騒がれて間もない頃でしたが、周辺が本当にゴーストタウンのようであったのが印象深いです。元々明治以来炭鉱開発のために 拓かれた街でしたが相次ぐ閉山により人口は激減、起死回生のため打って出た観光産業も失敗に終わり過疎化と高齢化が著しく進行しています。


夕張駅は炭鉱の閉鎖や市街地の縮小などの理由で、2度路線を短縮する形で移転し現在の位置になっています。裏手の大きな建物はホテルマウントレースイ。駅直結でも果たして鉄道で来る人はどれほどのものか・・。


この夕張支線も雲行き怪しいと思って乗りに来たのですが、なんとこの旅行の直後JRが維持困難線区の見直しを発表、それに応じて夕張市長がJRよりも先にこの夕張支線の廃止を提案するという「攻めの廃線」を打ち出しました。 廃線の時期はまだ未定ですが、これからお名残り乗車がどっと増えることが見込まれます。


個人的には夕張市長の提案は非常に賢明だと思います。廃止に反対しながら長い時間をかけて有利な条件を引き出そうとするよりもずっと建設的で未来志向です。廃止に反対しても良くて現状維持。それよりも鉄道にこだわらず 積極的に実情に合った交通機関の再構築を模索するべきで、それが地域の利便性の維持向上に繋がるというものです。


折返しの16:31発千歳行で帰ります。復路はマニアだけの乗車。


トンネルの遺構があります。複線だったほどかつては盛況していたのでしょうか。まあ盛況といっても貨物輸送の話でしょうけど。ちなみに現在夕張支線は全線単線で、交換設備もありません。
このあたりが沿線では最も市街地でしょうか

沼ノ沢〜 なぜか漢字表記と隣駅が消去



復路では新夕張に15分ほど停車。旧駅名である「紅葉山」の看板が保存されているというので、停車中に写真を撮ろうと探したんですが見つからず。後で調べたらホームではなく駅舎の外にあるそうです。。
貨物列車が到着

山は深いです

紅葉山のほうがいい駅名ですけどね

上り貨物列車に先を越されます



復路では旧十三里駅でスーパーとかちと交換。特急・貨物はバンバン走っているので列車交換の頻度は高いです。


追分で日高線カラーのキハ40に遭遇。なんでこんなところに?と思っていたところ、サボを見ると「夕張行」。長期運休により転属になったようです。


南千歳で快速エアポートに乗り換え、新千歳空港から飛行機で帰ります。北海道新幹線が開業しても、JR北海道の長い冬の時代は終わりそうにありません。遅すぎた経営範囲の見直しは、皮肉なことにいくら窮状を訴えても 急ぐほど反感を買ってしまいます。趣味的には味のあるローカル線が消えるのは寂しいですが、鉄道は輸送機関です。安全を第一に、強みを発揮できるところに資源を集中させなければ、幹まで枯れるのは時間の問題です。もちろん、国なり自治体が手厚く助成するというのなら話は別ですが。


最終日はあまり北海道らしいものを食べていなかったので、最後は空港ターミナルで弟子屈ラーメンを。魅力ある北海道の地、人口が減り苦しいなら外から人を呼べばいいじゃない!ということで活路はインバウンド!?