2010年7月17日、北総線印旛日本医大以東を延伸し成田空港まで通じる京成成田空港線、通称「成田スカイアクセス」が開業しました。
これにより従来JRまたは京成本線でいずれも1時間近く掛かっていた都心と成田空港が、最短36分(日暮里〜第2ビル)で結ばれるようになり、日本の空港アクセスが
改善されるようになりました。これに合わせて新線用新型スカイライナーのデビューや新駅「成田湯川駅」開業など、明るい話題としてメディアでも多く報じられています。
その一方で羽田空港のハブ化などによりそもそもの成田空港の斜陽化や、北総線の運賃問題など、残された問題もあります。今回はちょうど開業日がヒマであったので
成田湯川からバスで成田へ出て、銚子電鉄にも乗ることを考え出掛けてきました。ちなみに新型スカイライナーは未だ乗ってません(京成グループは嫌いなもので・・)。
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新鎌ヶ谷から北総線へ。新線開業に合わせてダイヤ改正&運賃改定なども行っているので改札窓口は 慌しく、時刻表も大量に配布しています。私も窓口にて北総線の記念1日乗車券を購入。ちなみに運賃改定によって北総線の初乗り運賃は200円→190円に なっています。行先表示器にはこれまで下り方面は押し並べて「印旛日本医大」行だったのが、「成田空港」の文字が 入っているなど、あちらこちらにこれまでと変化があり見ていて面白い。「アクセス特急」とは別料金不要の空港行特急のことで、 今回の新線開業によって誕生した新種別。遅々として進まなかった空港新アクセス路線が念願かなってようやく開通したということで、 意気込みが感じられます。こうしてまずは北総線に乗車。このあたりは厄介で、従来からの印旛日本医大行の列車は北総線の列車ですが、スカイアクセス直通の 成田空港行は京成の列車です。後者は運行を北総に委託しているわけではないので、北総区間でも京成の乗務員が乗っています。そんなわけで印旛日本医大行の列車で 一度千葉ニュータウン中央駅で下車。北総のNT中央〜日医大間は三セクらしくてわりと好きな区間。降りて驚いたのは定期券売り場に並ぶ人の列。本日から運賃改定により 定期運賃も改定されます。おそらく今までの定期を手数料なしで日割りで払戻し、新規に購入しているのでしょうが、ざっと100m以上並んでいます。北総は通学定期代に 自治体の補助が出ているようですが、それでも定期代は結構な負担になるんでしょうね。駅前では開業記念ということでフジテレビ系のイベントが行われています。 それはそうと、適当に線路の見える場所で待ち構え、新型スカイライナーを撮影。山本寛斉氏がデザインしたそうで、藍色が映えています。早速先頭鼻部分は汚れが目立っていますが・・。 公共建築はデザイン性だけでなく機能的でメンテナンスフリーまたは容易なものが求められるべきです。写真を撮り終え今度は印旛日本医大へ。巻貝型の駅舎は何度見ても特徴的。 こちらでもスカイライナーを撮影。最近私の撮り鉄成分が高まってきているようです。まあ適当な写真で十分なんですけどね。以前来たときは更地だった日医大駅の線路東側は彼方へと 線路が延びています。以前来たときはマンション1棟があるだけだった駅前は今も変わらず・・。まあ、以前は日中毎時2本という閑散ダイヤでしたが、アクセス特急の停車駅となり そのぶん純増となっているので、今後発展の余地は大いにあります。 | |
さていよいよ新線区間に乗り込みます。日医大駅から京急車両のアクセス特急に乗り、成田湯川へ。さすがの京急車両は加速率も良く、
揺れの少ない新線を130km/h(たぶん)まで加速。印旛日本医大から成田湯川まで8.4kmあるので距離は十分。在来線普通列車で130km/hの高速運転をするのは
こことつくばエクスプレスくらいでしょう。景色は山・林・田んぼが続き民家もまばらな未開の地を高速で走り抜けます。思いのほか長い印旛沼の
鉄橋を超え、成田湯川に到着。この間7分。今日は空港まで乗車せず、成田湯川で下車、バスでJR成田へ向かいます。成田湯川駅は対向式ホームと通過線2本で本線の通過線は
高速で通過できる仕組みになっています。駅舎はすべてが新しく、駅名標はそれまでの北総タイプ(日医大は公団タイプ?)から田舎くさい京成標準型になっており、ここが京成の駅であることを
示しています。開業初日ということもあってかなりの人が降りていますが、開業のお祭り騒ぎが終わるとどうなるんでしょう?近くには成田ニュータウンがありますが、列車は毎時2本、
運賃は高砂まででも片道880円、隣駅までの初乗り運賃は440円って。。まあそれはいいとして私の所持する乗車券は北総のフリーきっぷなので、窓口で日医大からの440円を精算する
必要があります。と、改札階へ降りてみれば窓口に並ぶ長蛇の列!どうやら手書きの補充乗車券を求める人達のようです。別に今日の日付さえ入っていれば券売機の乗車券でいいんじゃ?
と思いつつ、どうにか精算を済ませガラガラの券売機で入場券を購入。きっぷはやはり京成タイプ。さて駅外に出てみると駅前ロータリーでは神輿が担がれまさにお祭りムード。とはいえ他には
JR成田線(支線)の単線の線路以外なにもないのでJR成田駅行きのバスにすぐ乗り込みます。このバス路線は新設されたものではなく、以前から「湯川車庫行」として存在していたものが1停留所分くらい伸ばしたものです。
こうしておはやしの響く成田湯川駅を去り成田駅へ。
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JR成田駅に到着、ここから成田線で銚子まで行き、銚子電鉄にでも乗ろうかと。銚子は意外と遠くてなかなか行けなかったんですよね。
そんなわけで銚子電鉄は初乗車です。成田線の車両は211系のオールロングシート。千葉近郊ならともかくはるばる銚子まで行くのに
ロングシートとは・・。銚子まで行く人は特急を使えということですか?別に私も特急使ってもいいんですが、それならもっと特急の本数増やして下さい・・。
と閑散路線で次の列車なんか待っていられないので適当な車両運用を恨みつつ、1時間ちょっとで銚子に到着。
銚子ではJRと銚子電鉄は同一ホーム発着のため改札は無く、簡易Suica改札機だけがポツンと立っています。それにタッチして、待つこと十数分、青色の車両が ガタゴトやってきました。この車両は桃太郎電鉄とタイアップした車両で、修繕費か何か支払われているのか、中は桃太郎だらけ。それはいいんですが、2両編成の 車両は満員。車掌よりフリーきっぷ「小廻り手形」を購入します。なんとか座席に座れましたが、こうして立ち客たくさんの中出発。クーラーなしの車両なので 窓が開いており、走行音や風の音がリズミカルに聞こえなかなかいいです。途中の観音駅でまとまった降車があり、犬吠駅でほとんど空になり終点の外川駅で下車。外川駅は昔ながらの 木造駅舎で趣のある雰囲気。特に窓口の辺りが昭和初期くらいの勢いです。その窓口で記念入場券などを購入。そうこうしている間にオレンジ色の電車が入線。 先ほどの気色悪い真っ青の電車よりこちらの方がいいです。駅舎見学を終え、今度は隣の犬吠駅へ。こちらはモダン?な造りの駅舎。犬吠崎観光の玄関口で、有名なぬれ煎餅が 売られています。ぬれ煎餅のエピソードは有名で、車両の法定検査の費用が賄えず廃線の危機にあったところ、HPで「電車を直すために、ぬれ煎餅買って下さい!!」と 副業のぬれ煎餅を宣伝したところ全国で爆発的にヒット、ぬれ煎餅は予約しても数ヶ月待ちという事態になり、めでたく車両修繕費を集めることができたのです。HPで訴えた 悲痛なお願いと、ぬれ煎餅が銚子電鉄を救う?という意外なストーリー性で人気を博したといえます。いまや銚子電鉄は鉄道会社なのか煎餅屋なのかわからないという揶揄も 聞こえてきますが、副業(ぬれ煎餅)で本業(鉄道事業)の赤字を補うといった内部補助と呼ばれる仕組みは意外とよくあることなのです。いずれにしてもぬれ煎餅だけでなく 銚子電鉄そのものも全国的に有名になり、こうして大勢の人が連日乗りに来るようになったというのはまさに相乗効果というもので、経営再建のお手本といえるのではないでしょうか。 小廻り手形の特典としてぬれ煎餅が1枚サービスでもらえるので、私も「銚子電鉄を救った」ぬれ煎餅とやらを頂く。うん、しっとりとしていながら風味豊かでうまい。こわれ品が 安く売っていたので土産用に購入し、そろそろ帰途につきます。車内では相変わらず混んでいて、車掌は切符の確認や出札、扉扱いなど忙しそうです。こうして廃線の危機からいまや 安泰の様相を呈している銚子電鉄を見学できて満足し、経営に苦しむ地方鉄道はそれぞれ工夫を凝らして結果的に本業(鉄道事業)を自立させるような増収集客策を頑張って考えて欲しいものです。 そういった意味では私は新幹線開業などで揺れるJR地方路線を無理にJRのまま維持するよりかは、三セクなどに転換した方が各々の路線が必死になって経営努力をするようになると考えるわけです。 そうすれば路線は活性化し利便性は向上するし、もし何も講じず補助金が途切れたから廃止というのならばその路線はそれまでだったという話です。JRであれ三セクであれ、現状で甘んじているようであれば ローカル線はいずれ廃れ消えるのです。秩父鉄道のSL運転にせよ銚子電鉄のぬれ煎餅にせよ、方法は違えど各路線がその魅力を見い出しアピールして、最終的には内部補助に頼らない路線運営を実現してほしいと思います。 ローカル線紀行シリーズのまとめのようなことを書いてしまいましたが、千葉に到着すると、行先表示器には「快速 白い砂」の文字が!運よく外房からの臨時列車にめぐり合い、113系で船橋へ帰ります。 つかの間の総武快速時代の113系を愉しみ、今回のたびは終わり。成田スカイアクセスも銚子電鉄も、性格は正反対ですがどちらも鉄道の発展に資する存在であり続けることを願います。 | |